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2009年 > 100µmから150µmの薄肉部分をもつ複雑形状の一体成形技術の開発
2009年6月17日
富士通コンポーネント株式会社
100µmから150µmの薄肉部分をもつ
複雑形状の一体成形技術の開発
富士通コンポーネント株式会社(本社:東京都品川区、社長:松村 信威)の子会社である株式会社しなの富士通(本社:長野県飯山市、社長:長谷川 一)は、信州大学工学部との共同開発によりカーボンナノチューブ(CNT)(注1)ファイバーである気相成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber 、いわゆる Endo fiber)を用いて、100µmから150µmの薄肉部分をもつ複雑形状の一体成形技術を開発いたしました。
背景
従来の射出成形では、厚さ200µm以下の成形品の場合、樹脂の流れ性(充填性)が著しく低下するため充填不良などが発生し成形しづらいうえ、機械的強度をもたせることが困難でした。そのため、成形のために300µm以上の肉厚とし、さらに樹脂へカーボンブラックやカーボン繊維を混在させて成形する必要がありました。本開発により、射出成形で100µmから150µmの薄肉で実用的な強度を持ち、耐摩耗性、耐熱性、遮光性、帯電防止効果を有するモールド成形品の実用化が可能となりました。
開発の内容
本開発は、株式会社しなの富士通が、文部科学省の委託事業の「知的クラスター(注2)創成事業(第Ⅱ期)(注3)」として採択された「ナノテクノロジー・材料によるスマートデバイスの創成」事業に参画して、信州大学工学部(長野県長野市)を中心とする参画メンバーと共同でおこなったもので、信州大学電気電子工学科遠藤研究室(遠藤守信教授)、荒井研究室(荒井政大教授)での気相成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber、いわゆる Endo fiber)を充填材にした新規複合材と、株式会社しなの富士通で永年培ってきた機構部品での精密成形技術とのコラボレーションにて実現したものです。
気相成長炭素繊維が均一に分布しているため、耐摩耗性、耐熱性、帯電防止効果に優れた成形品の実用化が可能となり、射出成形で100µmから150µmの薄肉で実用的な強度を持ち遮光性のある複雑形状を一体成形することができるようになりました。
株式会社しなの富士通と当社は、この技術を生かし精密工業製品への応用に向けて継続的に取り組んでまいります。
肉厚100µmの成形部断面(×3000)
カーボンナノチューブが均等に分散していることがわかります。
注釈
(注1) カーボンナノチューブ(CNT)
炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質。曲げや引っぱりに極めて強く、耐薬品性を持ち、良導体にも半導体にもなる性質をもっており電子材料として非常に優れた特性を持つ。 Endo Fiber として知られている気相成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber、VGCF)は量産ベースの多層カーボンナノチューブで、現在リチウムイオン電池のほとんどに添加物として採用されている。(注:VGCFは昭和電工株式会社の登録商標です。)
(注2)知的クラスター
平成13年3月に閣議決定された第2期科学技術基本計画に基づき、文部科学省を主管とし実施されている地域イニシアティブの技術革新システム。地域において独自の研究開発テーマとポテンシャルを有する大学をはじめとした公的研究機関等を核とし、地域内外から企業等も参画して構成される。
(注3)知的クラスター創成事業(第Ⅱ期)
第Ⅰ期の実績を踏まえ6つの事業体が選定され、長野県では信州大学を中心とした長野県全域で「ナノテクノロジー・材料によるスマートデバイスの創成」をテーマに活動が展開されている。